●97年、私は日本の文化を見直すべき一大イベントを体験してしまいました。それは見仏ツアーであります(注/元祖見仏人は、作家・いとうせいこう氏とイラストレーター・みうらじゅん氏)。元祖見仏人のおふたりから始まった旅は、97年4月に全国の老若男女を巻き込み、新幹線1本貸切という空前の大イベント旅行へと発展。仏教の知識皆無の私も面白半分で参加し、充分楽しみながら見仏の奥深さ、面白さを知ることとなります。尚、見仏人は仏像を「ブツ」とあやしげに呼び、じろじろじっくり見ることが肝心です。(尚、一応宣言しておきたいのですが、私はいかなる宗教にも属さないし今後も属するつもりはありません。宗教上不届きな発言があってもどうかお許しください。)
●旅の友/仏友・ヒロツアーに共に参加したのは、以前勤めていた会社の同僚であり、辞めてからも長いことつきあいが続いている友人のヒロ。異色のこのツアー企画を知った時、誰が誘いに一番のってくれそうか考えた末、人選されたのが彼女である。話してみると案の定、ヒロは「面白そうじゃん」と乗り気。江戸ものや時代もの好きでもある彼女にとって、行き先が京都であるというのも気に入ったらしい。この旅以来、ヒロと私は仏友の杯を交わすことになる。
仏友としてお互いを認めあってから、似たもの同士であることを自覚。また、ここ数年来顔なじみとなってしまった池袋の飲み屋に行くときは99.99%二人一緒なので、店員さんに「あいつらレズちゃう?」と思われてないか気掛かりな今日この頃、である。さ、それでは、LET'S GO TO KENNBUTSU !
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●三十三間堂席取り合戦
ああ、諸行無常の席取り合戦。
いやあ、あれほど女の子たちのテンションが高いとは思ってもみませんでした。三十三間堂の駐車場に着き、バスの中からせいこう氏御一行を見つけ、私が「あー、あれせいこうさんたちじゃない?」と言った後、気付いた人達が「ほんとだー」とざわめき出してました。バスを降りる人が次々と二人に駆け寄り、一瞬後にはお二人はファンの女子たちに取り囲まれてました。そのツアーがこれほど熱心なファンの集まりとは知らなかった私は、たじたじ。駆け寄るほど理性を捨てられなかった私は、添乗員さんの旗のあとに従いみんなが揃うのをしばし待っておりました。出発前に「こういうツアーに行くんだー」と周囲の友人たちに言うと“ヘンな奴”扱いされてたし、このような旅の参加者は男性がほとんどではないかと予想してたのですが、これほど女子が多いとは思ってもいなかったです。
そして記念撮影の場に向かうと、さらにすごいことになっていたのですよねえ。女子たちの、あの席取り合戦の勢いはすさまじかったです。撮影グループ交代のたびに、みうら&いとう氏の隣を目がけて皆さん殺到しております。
あっけに取られて席取り合戦を見ていたのですが、その時突然、私の心の中にも闘争本能が目覚めてしまったのでした。久々にスタートダッシュの心構えをし始めた私の耳に聞こえてきたのは、となりのおばさま方のお話。「すごいわねえ。で、どの人が有名人なの?」(←なんと失礼な。でも実話です)。私は思った。「勝った……」。
交代の声がかかり、シルバーシートならぬ最前列のゴールドシート目がけて私たちは突進した。しかし私の立ち位置からはせいこう氏側にわずかに及ばず、みうら氏側を狙ったのです。と、ところが。なんと先ほどのおじ&おばさま方がそこに滑り込みホームラン。何であなたたちも走るの!? おばさまパワー炸裂に、ま、負けてしまったあー。人間の群衆心理って恐ろしいですね。●ザ・スライドショーに一番乗り!
私たちのバスの一行は、添乗員さんが大いにほめてくれたほど、時間をきっちり守る団体でした(そのぶんお寺での見学は駆け足でしたが)。で、そのおかげかなんと予定より2時間も時間があまり、早めにホテルにチェックイン。よって、スライドショーにも一番先頭の団体としてたどり着いてしまいました。ガイドさんとお話ししながら来たので、グループの先頭にいた私。ザ・スライドショーに一番乗りしたのは、何を隠そう私です。
そしてその一行は、一番長く開演を待ちわびてた団体でもあるわけで。今回のツアーはあまりにも大所帯なため、寺巡りのコースをいくつかに分けていたのですが、いくつかの団体が交通渋滞のため遅れていたのでした。しかし全団体が揃ってからでないとスライドショーは始められないとみえて、かなり待ってしまいました。その間ずっと、みうら氏率いるブロンソンズのCDがかかってて、頭の中をブロンソンズソングが駆け巡っておりました。
ようやっと全団体揃ったところで、スライドショーの始まり。隣の席のおじさまとおばさま御夫婦は、「仏像のスライドだって。どんなのかしらね」と楽しみに待っております。実は私、スライドショーの存在を知らずにそれまで生きておりました。しかし、スライドが始まってすぐにそのような人生を後悔することになります。「よ、世の中にこんなに楽しいものがあったなんて!」と大笑いしながら感激しまくってました。なにしろ出だしから強烈です。ヤシの実で作られた人形シリーズ(特にいとう氏のソックリ人形)にはやられてしまいました。その後、爆笑みやげ物シリーズが続き、「仏像ネタはいつ出てくるんだ?」と思っていると、中国のへんな仏像や仏像の足元で踏まれている邪鬼たちの写真と爆笑トークが。いやー、待ち疲れも吹き飛ぶほど笑わせていただきました。しかし、真面目な仏像スライドが見られると思っていたご年配の方たちは、笑いについていけず固まっておりました。●深夜の邪鬼たち(ミッドナイト・ジャッキーズ)
四条河原町で遅い夕食を済ませ、地下鉄で帰ってきた私とヒロ。乗り場までの移動でかなり歩いたので、足がたいそう疲れておりましたとさ。そのとき私の脳裏に、ある考えが浮かんだのでありました。「よし、今宵は邪鬼になろうではないか」。ベッドにうつぶせになり、ふくらはぎをヒロに足で踏みつけてもらうと、ベッドのスプリングも効いてこれがけっこういいマッサージになるのです。交代し、ヒロにも邪鬼マッサージをしてあげました。さすがに背中や顔は足蹴にしませんでしたが。
「もしかして邪鬼って、踏まれててキモチいいのかもよ」「そうか、あれも慈悲の心か」などと訳の分からないことを言い合っていた私たち。そう、その名はジャッキーズ。●湯豆腐ランチで旅の友
他の人達とお話をする機会はあんまりなかったのですが、嵯峨野での昼食の席で、両隣の人達と世間話をしました。まずは、「どこでこのツアーを知ったのか」という話題になり……。一人で参加していた女の人は〈旦那が文春のコラムでみつけてくれて、子どもの面倒は俺がみててやるから行ってこいって〉いうので来たそうで。そして〈いつも二人で行動してたから、一人で歩くのってなんだかバランスがとれなくて落ち着かない〉と。仲がよろしいようで。
隣の二人組女性は、みうら氏の前回のスライドショーに参加したらDMが来たので参加したそうです。スライドの話にみんなで花を咲かせていたら、反対隣のご夫婦のおば様が、「あのサザエ急須と同じのが家にもあるのよ。あんまり使ってないんだけど」とおっしゃる。おおっ、みうら氏とはちがう観点から選んだのかもしれないけど、いたのね、買う人が。●仏もろもろ
このツアー中、一番の感動は京都の東寺。スライドショー後に行った夜の、ライトアップ・ザ・ブッダがなんともいえず良かったです。特に薬師如来の光変化。まるで目を開けて、こちらを見つめて、また目を閉じていくかのようなお顔の移り変わり。しばらく放心して見つめてしまいました。いやあ、なんというか言葉を失ってしまう世界でした。私は無宗教ですが、それでも敬虔な気持ちになってしまいました。
また、清涼寺ではやけにファンキーな若いお坊さんが「皆さんはとても運がいいですよ。たまたま数時間だけ開帳しているこんなときにいらっしゃるとは」と出迎えてくれて、貴重な五臓六腑のお釈迦さまを見ることができ……。
締めの大報恩寺では本尊を見れなかったためか、どうもみんな「ぼけ封じ観音」や「おかめ観音」、「おかめ手拭」などにもっぱら注目。真面目なのかお茶目なのかよく分からない謎のお寺だ……。●見仏ツアーその後
実はこの旅に出るまで、いとう氏&みうら氏著の「見仏記」「秘見仏記」を読んでおりませんでしたことをここに告白いたします。でもたとえ読んでなくても、十分楽しめた旅でした。後日「見仏記」を読み、ラストシーンのみうら&いとう氏の間で交わされた三十三年後の約束にいたく感激してしまった私であります。ほとんど涙したといってもいいでしょう。おふざけキャラクターのみうら氏から、あのような言葉が出てくるとは。だてにお坊さんを目指していたわけではないのですね。それ以来、少しみうら氏に対する見方が変わりました(じゃ、今まではどんな見方だったんだ?)。
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