1999
あんな色白の美人は初めて見た。いや、人間ではなく、サボテンの話ですが。その夜、美人は友人の家のベランダの片隅でひっそりと咲いていた。
先週の週末の夜、ご近所仲間で園芸好きの友人宅に私はおじゃましていて、一緒にとある仕事(のようなもの)に取り組んでいた。友人が隣の部屋に資料を取りに行ったとき、「ねえねえ」と私を呼ぶ。何事かと思うと「月下美人が咲いてるの」と言う。ベランダを覗いてみると、ベランダの隅の隅で、サボテンらしからぬ葉を茂らせた影に隠れるようにして、握りこぶしくらいの大きさの白い花が咲いていた。
果たしてどんな美人か、近くでしげしげ見てみる。5センチほどはありそうな、剣のような形をした花びらが、幾重にも重なり合っていた。美人は伏せ目がちだった。“美人”なんていうから、どんな気取った女かと思っていたら意外にも控えめなのであった。今どきそんな美人は貴重だけどね。だからなのかな、この花が“美人”なんて名前で呼ばれるようになったのは。過去に“美人”などと呼ばれたことはない女は考える。うらやましいぞこんちくしょう、月下美人。でも、“声美人”となら言われたことはあるぞ。よそ行き声でだったけど。勝負にならないか。
「この花って夜にしか咲かないし、一晩だけしか咲かないんだよ」と友人が言う。なるほど、美人薄命。それで月下美人。「そうなんだー。一晩だけなんだ……」。たった一晩しか生きられないなら、美人と呼ばれなくてもいいと急に考えを改める私であった。
聞けば、彼女のところで咲いたのはその夜が初めてだと言う。そのときに居合わせるとは、なんだかトクした気分である。いいことがありそうな気がする。あのとき友人としていた仕事、いい結果になるといいな……。あ、宝くじも買おうかな。
(7/24 up dated)
雷の音はどんどん近くなってきて、まさに雷雲の真下にいるという感じ。近くに落ちたのではないかという激しい雷鳴が何度も響き渡り、稲妻が空に光る。滝のような雨が降り始めた。
夕立ちで雨はすぐ止むのではないかと思っていたが、その勢いはいっこうに衰えない。関東地域に記録的な雨が降ったその日、私はときどき仕事に行く事務所にいた。しばらくパソコンに向かって仕事をしてみるが、いつ停電になるかと心配で熱が入らず、何度も窓の外を見に席を立つ。2階の窓から、外の様子を眺めてみる。恐ろしいことに、見に行くたびに道路の水かさが増してくるのだった。雨の勢いは衰えず、30分後くらいには1階の道路脇に並んでいる、植物たちが植えられた鉢やプランターの高さまで水位は上がってきていた。外を歩く人の足は、ふくらはぎまで水に浸っている。向かいの新聞屋さんの軒先に並べられた自転車は、タイヤの1/3くらいまで水に浸っていた。
ビルの前の道路がみるみるうちに川と化していった。ほんの少し前まで、空には真夏のようにまぶしい太陽が出ていたのに。
東京・“中野坂上”の坂下にあたるその近辺は、坂の上からの雨水が流れ込みやすい地域のようだった。そういえば、反対側の東中野の坂下でもあるし、くぼ地のようになっているのかも。増水・氾濫しやすいのではないかと、事務所の人たちが話している。
事務所のあるビルの1階や近所ではどうやら床上浸水してきたらしく、大騒ぎしている。隣のほうのビルの1階では、カラのごみ箱で水をすくって窓から捨てている。
薄情だが、自分がいるところが2階でよかった、と一瞬思う。しかしこのままここで孤立してしまうのではないかという思いが頭をかすめる。いやそれよりも、ビルごと流されでもしないか……ときどきテレビなどで放映されるシーンのように。まあいざとなったら事務所の他の人たちもいるし、一人じゃないし……。でもこれからしばらくしたら仕事で出かけなきゃならないのになー、とちょっと心配。ズボンの裾まくっても歩けないぐらいまで水かさが増してきたらどうしよう……。すでに外をあるく人たちの足下は、膝くらいまで水に浸かっている。
しばらくしたら訪ねる予定の訪問先の人に、「そんなわけで、ずぶぬれで汚い格好で着いたらすみません」と一応電話を入れておいた。あまりのことにますます仕事が手につかず、何度も窓際をウロウロ。
「うわ! 椅子が流れてきた!」
川と化した道路をプカプカゆったりと、よくスナックなどにある一人掛けのソファのような古い椅子が流れてきた。シュールな光景だ。椅子よ、あなたはどこへ行く。
もう仕事そっちのけでみんなで窓にへばりついて見てみれば、ほかにもさまざまな物が都会の川を流れていた。道路と歩道などの段差解消用に置かれる敷石ブロック、ごみ、そしてクーラーボックス……。
近くの交差点も同じような状況らしく、交通渋滞が起きていた。近所の人が交通整理をしている。そのうち、警察のワゴンが出動してきた。中野の坂下エリアは、もはやカオス状態であった。やがて、雨が降りだしてからおよそ2時間が過ぎた。さすがにその頃は私も仕事に戻っていたが、ふとまた窓の外を覗きにいってみると……おっ!! 水が引いている! 雨は小降りになっていたし、増水した水は下水に流れていったようだった。そのあと外出したが、都心の他の方面ではそのような騒ぎはなかったようだった。
つかの間の緊急事態であったが、大ごとにならなくてよかった。でも、不謹慎にもちょっとわくわくしてしまった……。
それにしても、道路を流れていったあの椅子は、いったいどこまで流れていったのだろう。果たしてあれは落とし物になるのかどうか……。(7/25 up dated)
7月下旬、おバカパワーが素敵なイベントふたつに足を運びました。
ひとつはおバカ映画「オースティン・パワーズ・デラックス」。会場に人だかりの一角があってなにかと思ってみてみると、芸能人の花道でした。混んでいるので上の階から遠目に見ていましたが、遠すぎて誰が誰やら全然わかりません。しかし、林家ペー、パー子夫婦だけは遠目でもその派手派手さでしっかり確認できました。
映画のほうはといいますと、他の映画のパロディとか、ドクターイーブルの息子の衝撃のエピソードがけっこう笑わせてくれましたものの、私としては前作のほうが好きですねー。
まあ、日本でもようやく? おバカ映画が日の目を見てきたということはなかなかに喜ばしいことではあります。「スターウォーズを抜いて全米一位!」という前評判からか、今回は日本でもかなりイベント的に盛り上げているようでした。会場にいたオースティンの着ぐるみ人形はいまいちという感じでしたが、グルーーヴィなキャンペーンガール(外人さん)はイカしてました。
*********************************もうひとつは、“ダンス☆マン”なるグループの出演する、六本木ヴェルファーレのイベント。ヴェルファーレへ踊りに行ったことはありませんし今回も踊りが目的ではなかったのですが、今回行った訳は、いとうせいこう氏がゲスト出演するらしいとの噂を聞きつけたからなのでした。以前いとうさんからみのイベントで知りあったKさんとともに会場へ。Kさんの事前調査によると、当日は“アフロヘアの人とへんなあだ名の人、誕生月の人は入場無料”だそうで。ついつい出来心で、仮装パーティ用に以前買ったアフロかつら(青)を用意してしまった私です。会場入口でアフロかつらの人々がけっこう来ているのを見て、勇気をふりしぼって私も受付けを突破!! 係の人に「アフロ様一名ですーー」と言われてしまいました。
中に入ったらかつらは外してしまいましたが、フロアには赤青黄色、さまざまなアフロかつらの人々がいて、不思議な空間でしたねー。お立ち台では、ほんもののアフロヘアーの黒人男性と70年代ファッションのホットパンツ白人女性がダンスを披露しておりました。かっこよすぎる……。
ところで、ダンス☆マンがメインで出演する会場に来ておりながら私は彼らについてあまり良く知らなかったのですが、もーー気に入ってしまいましたねー。ミラーボール星人、ダンス☆マンは70年代を彷彿させるソウルミュージックを日本語で歌う。しかもそれは限りなくソラミミソング。しかも話の筋が通っている。その詞は限りなくおバカ。元歌は、私としてはタイトルはすぐ思い浮かばないけれど、どれも聴き覚えのあるものばかり。ミラーボールの回るディスコの体験はあまりありませんけど、なんだかとっても懐かしい曲の数々で、そして膝から力が抜けそうなほど笑えて、楽しかったなあもう。
そして! 久々のいとう氏ラップ。ダンス☆マンのアルバムにゲストミュージシャンとして参加している曲で、「シュワッチ・マインド」という一曲をやってくれました。いとうさんの生ラップを聴くのは、数年前の「ザ・スライドショー」のオープニングイベント以来でしたが、なんか今回はかなり攻撃的で客のノリもよかったのでこちらもかなり楽しかったです。一曲じゃ物足りない。最後にもう一度出てきてくれましたが、暴れてったなあ…。
またやって欲しいものです。ダンス☆マンライブは月例イベントらしいので、いとうさんもまた出演してくれないでしょうかね。
そんなこんなで、おバカイベントで元気を充電した7月でありました。
(8/17up deted)