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今夜の番組チェック

霜月(November)

2000


●体の声

●秋のミニミニすれすれ


●体の声

 「すれすれ草」が始まって以来、なんとか綱渡り的に“最低1ヵ月に1回はなんらか更新”をしてきたわけだが、とうとう3ヵ月もの穴をあけてしまったのだった。ここに書く時間がまったくなかったわけではなく、そりゃ食事もすればテレビも観て、ときたま映画も観ていたわけである。しかし、仕事を片づけてから……と思っているまに後回しになり……。なのになぜかアクセスしてくださる方がいて、不思議なものの、なんだかありがたい気持ち。来るべき21世紀を前に、今世紀のうちに滞ったページやらねば。ってなんだか嘘臭い発言だが。

 そんなこんなでまたばたばたしていた11月半ばの朝、急激な胃の痛みで目覚めた。しばらくすると治まったが、そのうちまた痛くなる。頭も重い。そういえば前日、なんだか濃ゆくて甘ったるい赤ワインをしたたか飲んだので、そのせいかとふと思った。キムチ鍋なんて刺激的なものも食べちゃったし。ここのところどれだけ飲もうと宿酔いには縁のなかった私だが、久しぶりにやっちゃったかと思った。だが、どうも宿酔いとは違うようだ。その日は辛かった。胃は間隔をおいて断続的に締めつけられるように痛む、頭は重い、吐く、お茶を飲んだら胃が痛み、また吐く。よっぽど病院に行こうかと思ったよ。その日は仕事をする気になれず、ずーっと布団で寝てしまった。食いしんぼの私が24時間ものを食べないとは、自分でも信じられなかった。翌日も食欲はなかったが、胃の痛みはほとんどなくなった。午後にうすーいおかゆを作って食べる。夕食もおかゆ。

 数日後、ようやく食欲が戻ってきた。だが。私の体に、劇的な変化が起きていたのだ。好きだったものが欲しくないのだ。お酒、コーヒー、辛いもの。その後、体調が普通に戻ってからこの数週間でコーヒーは多少飲むようになってきたが、それでも前よりは少ない。お酒も、この半月でまだ 数えるほどしか飲んでいない。

 体が何かを欲していないときは、それが体の声だと思って、素直に従ってみよう。今回、そう感じたのだった。

 食べ物だけじゃなくて、本や映画、異性に対する好みも同じなのかもしれない。なんだかここ数ヵ月、やたらにアクション系の映画が見たいのだ。で、「X-メン」やら「チャーリーズエンジェル」「グリーンディスティニー」なんかを、仕事の合間合間に観に行ってしまった。もろアメリカーンなタイプのこの手の映画やアクションって、最近は敬遠ぎみだったはずなのに。インドアな生活のこの頃の私、無意識のうちに映画の疑似世界に自分との対極を求めてるのでしょうか。本当は自分も暴れ回りたい、動き回りたいよと。そういえばハタチぐらいの頃、やたらにアクションやカーチェイスものの映画ばっか観てたものなあ。あの頃もそういう傾向だったのかも。

 というわけで、体が声を発しているときは、その声に素直に従ってみるようにしてみようということで、今後しばらくやっていくことにしてみます。

※のちほど、まとめて過去3ヵ月のミニつれづれでも……。
 そういえば先日見た出来事。あたたかな日の射す駅のプラットホームで、缶ビールをごみ箱に捨てた20代後半ぐらいの男性がいた。服装はいたってフツー。まだ時間は2時過ぎ。つい数カ月前、一人浅草でビールを立ち飲み(本当は座り飲み)したことを棚にあげ、「おいおい」って内心思った私、その後ろ姿をつい観察。彼はそれから今度はコーヒー類の自動販売機の前に立ち、じっと見ている。「ビールの次にすぐコーヒーかい?」と引き続き注目していると、彼は買わずにその場を離れた。昼間から酒を飲みたくなるなにかが彼にあったのか、単なる酒好きか。やっぱ自分の部屋で仕事してるより、外のほうが面白いなあ。ああ、ノートパソコンを今度こそ買いたい……。

(12/4up dated)

↓そのうちアップ?
■体が欲した映画/「X-メン」「チャーリーズエンジェル」「グリーンディスティニー」
■頭が欲した映画?/「マルコヴィッチの穴」
■10月はすし三昧
■ブエナ・ビスタ・ソシアルクラブ(すっかり前の9月)


●秋のミニミニすれすれ

 体調もすっかりもと通りになり、コーヒーもお酒もおいしく感じられて有り難い今日この頃。
 そんななか、仕事用の荷物がどうしても多くなってしまった先日の外出時。しかし、重くとも移動中に読むものがないと落ち着かないので、なるべく薄い文庫本で、かなり前に読んだものを持っていった。選んだのは大宰治の『ヴィヨンの妻』。晩年の短編ばかりが入っているものだ。それを読んでいるなかで出てきた主人公の心境に、“「心には悩みわずらう」事の多いゆえに、「おもてには快楽」をよそわざるを得ない、とでも言おうか”“小説を書く時も、それと同じである。私は、悲しい時に、かえって軽い楽しい物語の創造に努力する”とあった。おそらくこれは大宰本人の正直な気持ちだろう。数年前、『パンドラの匣』を読んだときに私が感じた印象は正しかったのかなと思ったのだった。
 そして私も先般までまさに大宰的心境にあったといえるのでは。先にも書いたように、体を使っていなくて現実的な目先のことばかり考えなきゃいけないから、単純でアクション性満載なフィクションを欲するのではと。12月も半ばのここのところではそうでもなくなったが、やはり人間には、バランスが大事である。と、ここ数ヵ月を思い起こす師走であった。
(以下Up dated 12/18)

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◎体が欲した映画(10〜11月)
/『X-メン』『チャーリーズエンジェル』『グリーンディスティニー』

 上にも書いたように、なぜか突然観たくなった映画三部作。って、別に各映画には何の関連もないのであるが、私の精神状態を反映し体が欲したと思われる世紀末的映画?

 映画『X-メン』のもとであるアメリカンコミックを私は読んだことがないのだが、それでもけっこうキャラクターが立っていたのでわかりやすく、楽しめるものだった。日本人にとっては「アトム」や「妖怪人間ベム」(たとえが我ながら古いなあ)などで、“人間でない非人間の哀しみ”という物語に親しんできた要素があるだろうから、ここで描かれる論理はなじみやすいだろう。人間から差別されるミュータント、さらにそののなかにも人間を憎む一派と、人間との共存を望む一派がある。通常の単純な勧善懲悪ものよりは、いくぶんそのなかに悲哀を感じさせるものとなっている。続編があるからか、まだまだ謎は残り闘いは続く、と多少ラストがしり切れトンボ的になり消化不良な面はあるが、SFもの好きの欲求を満たしてくれる映画ではあるだろう。

 さて次に、『チャーリーズエンジェル』。往年のテレビシリーズと比較するような野暮なことをしさえしなければ、それはそれでいいんじゃない? という感じ。同じようなものを求めると腹が立つものね。私自身、テレビシリーズは大好きだった。ヒーローばかりが活躍するテレビドラマやアニメが多いなかで、美女たちが知的にパワフルに相手をやり込めるのは、“自分では決してできないこと”として憧れたものである。この映画は女性ファン向けというよりは男性ファン向けに作られている感があるけれど、ま、いいんじゃない。ドリュー・バリモアのレーシングスーツからはだける胸には女の私もびっくりしたぞ。ちょっといやらしかったけど。個人的には、『アリー・マイLOVE』にも出演しているルーシー・リュー(演技がちょっと同番組とかぶっている)のクールな役柄がお好み。コンピュータ・インストラクターに扮してるエピソードのところはかなり笑った。

 仕事帰りの夕方に衝動的に観た『グリーンディスティニー』。『狼たちの挽歌』シリーズ以来けっこう好きなチョウ・ユンファが出ることもあり、ちょっと観たかったのであった。これは香港・中国合作だったと思う(パンフや資料が手元にないので不確かだが)。秘剣・グリーンディスティニーをめぐり、広大な中国を舞台に、仇討ちと愛情劇が繰り広げられる。ワイヤーアクション盛りだくさんで、闘う相手同士が目まぐるしく画面中を飛び回る。屋根から屋根へ跳ぶときなどに足元が泳ぐのにはちょっと違和感があったけど、生身の体をあれだけ駆使するアクションってアメリカ映画のSFXの上をいくと感じるな。竹林での闘いで竹から竹へ人が自在に飛び回るシーンや、ラストでヒロインが雲の中を舞っていくシーンは、観ていた私に不思議な浮遊感を伝えるものだった。この映画を観た数日後、たぶんその影響で、空を飛ぶ夢を見た。気持ち良かった。

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◎頭が欲した映画?/『マルコヴィッチの穴』

 この映画の宣伝ポスターなどからイメージするとコメディーのように予想されるが、実際は哲学的な、こむずかしくて少し退屈、でも予想がつかなくて摩訶不思議、クスッとニヤッと笑える映画だ。だけど私はこの映画、嫌いじゃない。結末の予想がついてしまう映画がなんとまあ多いなかで、この映画は結末どころか次に何が起こるか、まったくもって予想できない。この裏切られる感じがたまらない! かといって難解すぎるほどでもなく、シニカル過ぎない笑いの要素もある。これをもしヨーロッパ人が監督したら、もっと難解でシュールなものになったんだろうな。7と1/2階って設定は、もしやフェリーニの8 1/2を意識してるのかなと思ったりもして。

 他人の目を通してものを見たい、他人になりたい、という変身願望を映画のエッセンスに加えたものはこれまでにも数々あっただろう。だがそれらは、その本人まるごとと入れ替わってしまったりするものだったはずだ。一瞬だけ、しかも何人も他人の頭の中に入り込める、しかも他人の五感を通して自分がものを感じられる。そんな手段が「穴」の通過というのが、このストーリー設定の面白いところ。そして多くの人に頭のなかを出入りされるマルコヴィッチと、出入りする人々のアイデンティテイが次第にあいまいになっていき……。この映画のようなことは決してあり得ないけれど、他人の感覚を知っていくことで、自分も気づかなかった自分に目覚めていくキャラクターたちの設定はとても興味深かった。たぶん教訓的なメッセージはこの映画の製作者は持っていなかっただろうけれど、人間って? 命って? 自分って? とついつい考えさせられる。

 ジョン・キューザックが操る(実際操っているのは別の人)パペットの見事な動きや、その動きをなぞるマルコヴィッチの踊りのシーンも圧巻。でも、パペットのように人に操られるのではない生き方をしたいものだとふと思うのでありました。

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◎リチャード・ファウンズワースのこと

 映画『ストレイト・ストーリー』の主役だったリチャード・ファウンズワースおじさんが、猟銃自殺したという記事が、確か10月のある日の新聞に載っていた。あれだけの名演で人を勇気づけてくれたのに、残念だなと思った。しかし彼にもそうせざるを得ない事情はあったのだろう。いや、もしかしたら事故かもしれない気もする。それにしても、『ストレイト・ストーリー』のなかで、静かに怒り、銃をぶっぱなしていた彼の姿がだぶってしょうがない。

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◎10月はすし三昧

 10月は仕事ですし屋を何軒もめぐった。それらの記事を書くためだったが、かなり役得で嬉しい仕事だった。むふ。いえ、ただそれだけで申し訳ない。子どもの頃のように、すしネタでは玉子やエビ、貝しか食べられなかった私のままだったらさぞかしキツイ苦行であったでしょうが、とてもとても楽しい数日間でした。あまり好きでなかったサバやコハダ、大トロもおいしいものが食べられて、あー極楽。築地の店に行く前の空き時間待ちには、場外市場をうろついていたらついつい生ものを買いたくなってしまい。いかん、いかんと自分に言い聞かせ、しかしそれでもお得値の昆布を買ってしまったりして。これでおいしいダシを取ろうっと。

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◎ブエナ・ビスタ・ソシアルクラブ公演(すっかり前の9月)

 もうすっかり過去の夏の宴となってしまった、東京国際フォーラムでのあの情熱の一夜(詳細は掲示板にて当日ミニレポートあり)。彼らの音楽が好きだったこともあるが、メンバーが高齢で「もう来てくれないかも! でも一度でいいから生で聴きたい!」ということで、あのときはかなり意気込んで追加公演のチケットを取ったものだ。12月現在、また来日公演を行なうという情報あり。なーんだ。でも、前回チケットを取りそこなった方、次回はぜひ頑張って取って下さいな。生で聴く価値、じゅうぶんにあると思います。

 9月のライブでは、ラッキーにも前から6列目ということに気分はウキウキ。しかしそんなこともライブが始まるうち、観客が前に詰めかけて関係なくなっちゃったけれど。最初は「よく見えないのよねー」とイライラしてた私だが、そのうちダッシュしてってかぶりつきで見てしまいました、はい。なんといっても高齢揃いのメンバーだから、2時間をフルで歌い、演奏というのはかなりキツイようで、ボーカルのイブライムやオマーラは後半から登場。でも、バックで演奏していたメンバーはかなりぶっ続けでやってたっけなあ。途中で汗拭いてたし。
 私が感激したのは、ピアノのルベーンの演奏! 数曲しかやってくれなかったけど、あのヨロヨロ歩く姿からは想像もつかない、冴えた音を奏でるのであった。そのあと弾いた人の音とはぜんぜん違ったものね。私の席からはルベーンの後ろ姿しか見えない位置だった。でもおかげで、腰の悪い彼が鍵盤の端を弾くときに体を傾けられなくて、少しずつお尻の位置をずらしていくのがよく見えた(笑)。背筋が伸びたままなのが、見ていてすごく気持ちよかった。ルベーンのことは映画でも私にとって愛すべきキャラクターとして映っていたので、目の前で見るととても感激。アンコールで再登場したときは思わず舞台に駈け寄ってしまいました、はい。他のメンバーは、ステージ前に詰めかけ手を伸ばす我々の手を取り握手してくれたけど、ルベーンは腰が悪いのでかがめない。で、我々に投げキッスをしてくれていた。

 もちろんイブライム、そしてオマーラの生歌も、CDなんかからではとても伝わりきれない素晴らしさ。特にオマーラの歌声からは、文字通り空気が震えるのがびりびりと伝わってくる。しかもイブライムもオマーラもとてもお茶目。気さくに観客から花や首飾り、ネックレスなどの物を受け取り、すぐ身に付けながら歌ったり。サインを求める人にステージ上からサインしたり。気さくに観客と握手してくれたり。私が伸ばした手も、オマーラは握ってくれましたっけ。
 老いも若きも陶酔し踊った、ブラボーかつエクセレントな夜でありました。


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