カメライダーのひとりごと
●雑誌「ミスターバイク」掲載文
『男のジャーナル』 〜バイクは女のロマンだ〜
(というコーナーに載った)
/もうずいぶん前の投稿文。80年代(一部加筆修正)
よくある話だけど、女の子がバイクに乗るキッカケとなるのが男の人。 それも、タンデムシートに乗せてもらって、というパターンが非常に多い。 しかし、私をソノ気にさせたアイツは、唯の一度も私を後ろに乗せてくれ なかった。 ──なーんていうとカッコイイけど、要はバイクと、一人の男性に対して 片思いだった訳なんですな、これが。 バイクとの衝撃の出会いは花の高校3年生、季節は秋。学生気分も中途半 端で、しかも面白くない出来事が続いてた。何かとの新しいめぐり逢いを求 めてた。そんな時、初めて“バイクに乗るヒト”に出逢ったのだった。孤独 なライダーを気取ってロマンに浸ってるけど、なぜか何度も地面とお友達に なって(つまり、何度もコケてるということ)しまっては嘆いてるヒト、RZ のカットビ兄さん。同じ高校の先輩だったという偶然もあって、親近感が湧 いた。 それまで悪友たちから「絶対にあなたは鈍いから車やスクーターなんて乗 らないほうがいい」と、余計なお世話の有難きお言葉を、お経のように聞か され続けてきた私。私自身まったくその通りと思っていたのだが、ソイツの バイク談義を聞くにつれ、何を狂ったかバイクの虜になってしまった。 「イライラしてる時、後ろに乗せてもらって飛ばしてもらったら、気分もス ーッとするんだろうな!」なんて単純に思い込んで、「乗せてよー」と何度 もねだった。でも、「バイクは一人で乗るもんだ」とか「危ないから」とか 色んな理由をつけて、とうとう一度も乗せてくれなかった。 けれど今になってふと考えると、あの頃乗せてもらえなくて良かったのだ と思う(負け惜しみではない)。乗れない事でバイクとソイツの間に一定の 距離を感じていた私は、バイクへの愛着を数年間にわたってじっくり熟成し、 発酵させることができたからだ。 そんな私の想いは、「その人のタンデムシートに乗りたい」から「誰でも いいから乗せてほしい」へ、そして「誰も乗せてくれないんだったら自分で 乗っちゃおう」と変革をとげたのでありました。 折りしも当時はバイクブームに火がつきはじめた頃。しばらく私も“ライ ダー症候群”にかかってしまっていた。街でエキゾーストノートを耳にすれ ば振り返り見つめ、ヘルメットを持って歩いている人を見ると、これまた立 ち止まり観察してしまう。 そしてハタチにして、遅咲きの原付ライダーとなるのであります。50ccで も本当は、DT50とかのギア付きオフロードバイクで野山を走りたかった。で も周囲にはそういう仲間もいなかったし、万年貧乏症の私は指をくわえてじ っとガマン。そんな時、知り合いからスクーターを安く売ってもらえる機会 に恵まれた。スクーターだって当時の私には立派なバイクだ。やっと乗れる 嬉しさのあまり、川崎←→新宿までの通勤に使ったり、埼玉まで里帰りした りして走りまくった。DTが欲しかった私は、オフ用のヘルメットをなぜかバ イクより前に購入していた。それで、ごっついオフロードヘルメットを被り スワンのゴーグルをして、スカートをはき、ルンルン気分でスズキのLOVEに またがって走ってた。私としては割と真剣にライダーしてたつもりだったの だけど、トラックの運ちゃんに指差されて笑われた事などを思い出してみる と、かなり異様な姿だったらしい。 それから私は22歳になってようやく中免ライダーの仲間入りを果たした。 その後、何ともショックだったのは、あんなに憧れてたDTに乗れないこと! またがってみたことの無かった私は、DT200では片足のツマ先さえも地面に 届かない事実の前にボーゼンとしてしまった。じゃあ、次の候補のXLは? というと、これも駄目。結局、条件を満たしてくれたのがTLR200だった。 まあこれも何かの縁でしょうと、TLRとおつきあいを始めたわけ。その後、 多摩川で何度もデートを重ね、一緒に転んでは遊んでいたものであった。 しかしそのうち、遠くへ行きたい症候群が現われ始めた。そしてTLRは婿養 子に出され、替りにGB250クラブマンがやって来た。現在は彼(GB)と一 緒に月子のようにメェメェと道に迷いつつ走ってる(※注:月子とは小道 迷子さんの漫画の主人公の女ライダーである)。 バイクと接近遭遇した頃は、タンデムシートや誰かのテールランプが無け れば走れなかったけど、今はいらない。誰も前を走ってない道を、一人で走 るのが好き。ずーっとずっと走り続けていれば、必要な人や逢いたい人には いつか逢えるし、そうでない人には自然と逢えないものだ、と思う。
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