カメライダーのひとりごと
●災難だらけの北海道ツーリング@'90.Summer
GB250を購入後、東北、伊勢志摩に続き、
北海道ソロツーリングに出かけた。
そのとき体験した、忘れられない事件をここにふたつ紹介。
1.タンク事件
それまで北海道は1度行ったことがあったが、バイクでは初めてだった。北へ向かう列車・モトトレインの車中で、これからわが身に降りかかる災難も知らず、私は胸を踊らせていた。
早朝に函館到着。列車内で仲良くなった女性ライダー二人組と半日一緒に走る。函館のドライブインでカニ丼を注文するが、カニカマボコが載っていて「カニの本場でカマボコだなんて!」と嘆き悲しむ。ドライブインを出て、私のバイクの下のアスファルトになにやら小さいシミを発見。オイル漏れかな? とちょっと心配する。「バイク屋で見てもらったほうがいいかもよ」と彼女たちも心配してくれた。
その日はニセコ近くの昆布温泉で温泉に入り、公園でキャンプをし、夕食には今度こそ本物のカニ入りのカニめしを食べる。翌日は積丹半島めぐりをしているうちに、バイク屋へ寄ろうということなど忘れてしまった。天気も前日とはうって変わって快晴。気分よく海沿いの道を走っていると……。なんだか、ガソリンタンクからシューシューと音がする。ふと目をやってみると、な、なんとタンクの下方横からガソリンが噴き出しているではないか。大噴出ではないが、細い飛沫が勢いよく噴出し続けている。あまりのことに、私は気が動転した。頭の中はパニックである。
「ガソリン=引火の可能性あり」、という図式が頭に浮かぶ。すぐさまバイク屋を探さなくては! とあせりつつバイクを走らせながら、通りすがりにバイク屋がないかチェックする。しかし、こんなときに限ってなかなか見つからない。東京と違って、バイク屋が少なさそうなのもネックだった。小樽ならあるかもしれないと、必死に飛ばす。途中でトラックを追い越すが信号待ちで追い付かれ、隣に並ばれる。「おいおい、運ちゃんお願いだからタバコとか窓から捨てないでよ〜」と内心ドキドキ。そうしてる間もタンクの噴水は止まらない。心なしか先ほどより激しく噴出している気がする。ええい、走り続けるしかないぞと、前にもまして真剣にバイク屋を探す。しかし、ない……。おかげで海岸線沿いに続く奇石奇勝も、眺めているゆとりがなかった。
数キロ走り、小樽でホンダの看板を見つけたときは心底ホッとしたー。バイク屋のおじさんに訳を説明し見てもらう。タンクの中のガソリンを抜いて中を覗いたおじさんは、
「あー、だめだねこりゃ。あちこち腐食してるよ。これ1カ所溶接して直したところで、またもっと大きい穴が開くよ」
と絶望的な発言をする。
「ど、ど、どうすればいいでしょう?」と途方に暮れる私に、
「タンク換えるしかないね。在庫があればだけど」
と答える。値段を聞くと、3〜4万円するという。そ、そんな。ここで修理代を払ってしまったら、この先の旅費が心細くなってしまう。道はふたつ。このままバイクを北海道に乗り捨て家へ帰るか、金を払って極貧ツーリングを続けるか。北海道上陸2日目にして、ツーリング中止の危機である。
気が動転していたので忘れていたが、おじさんに「カードないの?」と言われ、カードがあることを思い出した。もし在庫がなくて発注待ちだったらお手上げだったが、ちょうど在庫があったとのことですぐ交換してもらえた。それまでシルバーのタンクだったのだが、在庫は赤1点のみだったので、タンクだけ赤になってしまった。しかしおかげでピンチを脱出し、ツーリング続行決定。
その日はそれですっかり脱力し、キャンプする気力がなくなったので、近くの宿を探す。北海道にはライダーを無料で泊めてくれる“ライダーハウス”というものが多数存在するのだが、そのひとつである「竜宮閣」に泊まることにした。そこは居酒屋でもあって、店で食事をすれば宿泊無料というシステムになっている。確か、食事は1500円ぐらいで食べ放題だったと記憶している。
それまでライダーハウスなるものを利用したことがなかった私であるが、見知らぬライダーたちと話し、うまいホッケやカニなどを食べるのもまた楽しかった。私のその日のタンク事件は、もっぱらの話題となってしまった。(当時そこで知り合った人のその後の報告によると、そのライダーハウスは数年後なくなってしまったそうである)
2.写真事件
翌日、苫小牧へ出て海沿いの道を走る。取り替えたタンクも問題はなく、天気も快晴で、絶好調である。海がきれいだったので、ここいらで海をバックに記念撮影でもしようかと、ベストポイントを探す。道路を少しそれたところの砂浜に見当をつけ、バイクを降りて歩く。岩に載せたカメラをセルフタイマーにセットし、少し離れたところの砂浜に立った……。はず、だったのである。だが、私の足は膝までずっぽりと砂地に埋ってしまった。あせった。はめられた。「しまった、ここは底無し沼だったのか!?」と気が動転した私はもがいた。カメラのシャッター音が聞こえた。もがきながらも、「いい絵が撮れたかもしれない」などと密かに思ってしまった。
幸い底無し沼ではなかったようで、埋ったのは膝上どまりだった。あせっていたのでやたらにもがいてしまったが……。どうやらそのあたりの砂地は水分が多く、非常に柔らかいようだった。なんだかとっても間抜けである。あそこにバイクを乗り入れなくてよかった……。注意看板でも立てておいてほしいものである。
その後の差し当たっての問題は、両膝までドロドロのジーパンをどうするかであった。荷物を少なくするために、このときはジーパンは1本しか持ってきてなかったことを後悔する私であった(以後、この事件を教訓にツーリングにはどんなときもジーパンは2本持参)。とりあえず洗わなくては、とバイクにまたがり、ガソリンスタンドを目指した。かなり恥ずかしかったが、スタンドで水道を借りてジーパンを履いたまま洗わせていただいた。やれやれ。
それからは日高ケンタッキーファームに寄り、馬に乗ったりなどして平和に過ごした。
それ以降の日程では、襟裳岬、帯広、然別湖、日勝峠などを回ったが、行く先々で霧と雨に見舞われてしまった。おかげで、せっかくの雄大な景色もあまり眺めることができなかった。峠で数十メートル先しか見えない霧に包まれたときは、「マジで死ぬかも……」と思ったものだ。
晴れていた2日間に起こった2大事件が、どの出来事よりも強烈に記憶に残った北海道ツーリングであった。※後日談:帰ってから、写真のあがりを楽しみに待った。むろん、砂沼にはまった写真の出来映えが気になっていたのである。そして、できあがってきた写真には……青い空と砂浜が写っているのみであった。でもそれは単なる風景写真ではない。アングルから外れた手前で、私が必死にもがいていたのである。考えてみたら、ちゃんと立ってることを想定してアングルを決めたのだから、撮れてなくて当然である。でも撮れていなくて残念……。
なお、後日UP予定のカメライダーシリーズでも、またもやトラブルに遭遇する私が描かれる予定。UPまでしばしお待ちを。