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巻第九 平成十三年 九月
※初めての方は一番下からお読みいただくと、日付の順に見られます。
■あまのじゃくはアウトサイダーが好み
/映画「ブロウ」「夜になる前に」のジョニー・デップ小さい頃から「ヒーロー」よりも、社会からはぐれた「アウトサイダー」タイプが好きだった。子どもの頃観たアニメ、テレビ番組に出演する歌手や俳優は、明るいキャラやアイドルタイプよりも、影を背負っているようなタイプのほうを好んだ。本質的にあまのじゃくの私のこと、本能的に仲間の匂いをかぎつけるのだろう、たぶん。まあ、好みと現実は別であって、現実に好きになる場合はそういう相手はちょっと疲れそうで嫌だけど、キャラ的にはそういうタイプが好きなのだよなあ。
ハリウッドの異端児といわれる俳優、ジョニー・デップに好感を感じるのも、私のそうした性分からだろう。あえてアウトサイダーを演ずることを好む、変わり者の俳優。その彼が出演する映画がこの秋、立て続けに2本公開されている。ひとつは、実在の大物麻薬ディーラーを主役で演ずる「ブロウ」。もうひとつは、カストロ政権下で弾圧されたキューバの作家アレナスの半生を描いた「夜になるまえに」。こちらでは、女装のゲイと、中尉の2役を演ずる。
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ようやく仕事が一段落した9月中旬、まずは公開間もない「ブロウ」を観た。そのあとの週末、深夜番組「虎ノ門」で、毒舌の井筒監督がこの映画を初の5つ星評価していた。しかも上映後、涙目。おー、鬼の目に涙。井筒監督の感覚と私はこれまでどうも近いものがあったが、今回も。なんとなく嬉しかったりして。
さてその「ブロウ」。実在の麻薬ディーラー、ジョージ・ユングの半生。現在37歳のジョニー・デップが、20歳そこそこの年齢設定から出っ腹の中年期まで自然に、クールに、そしてときにコミカルに、切なく、演じ切る。うーん、その変遷と演技の幅にグッとくることしきり。脚本もテンポよく、要所要所で緩急つけつつ、一人の男の生涯を見事に描ききったという感。人生の浮き沈みとそこにからむ人間関係、愛情と家族の絆。観て楽しみながらも、いろいろと考えさせられるものがあります。ユングの父親(レイ・リオッタ)やカリフォルニアのゲイの麻薬ディーラー(ポール・ルーベンス)など、脇を固める俳優陣もなかなかに魅力的で、飽きることなく楽しませてくれ、また、最後にはしんみりとした気持ちにさせてくれるいい映画。社会派っぽい堅さはないのに、ひとりの人間の人生を通しドラッグの闇の部分を観る者に知らしめ、嫌みでないほどの人生訓と娯楽性をあわせもっている。そのバランスは絶妙。
ファッションもおしゃれで、特に60年代のカリフォルニア時代、ユングの青春期のあたりは見ていて楽しい。うるわしい青年期のユング(デップ)も、娘の出産時に気を失っちゃう彼も、腹の突き出たロンゲの彼も、ファンのひいき目ではどれも「ステキ〜!」ってなっちまうわけでして、はい。でもたぶん、ファンでなくともなかなか楽しめるはず。
ユングの妻役のペネロペ・クルス、「オール・アバウト・マイ・マザー」では可憐な修道女に徹しきってくれたかと思うと、ここではとってもビッチな役どころもはまってて、この人もなかなか演技の幅が広いのだと感じさせてくれた。
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さて、ひいきのデップ様がまたまた出演の「夜になるまえに」。彼が登場するのは中盤以降なので待ちかねたけど、2役どちらもかなりキワモノなので、ほんのわずかの出演でもなかなかに楽しめた。特に女装のゲイ、ボンボンは気味ワルイけど最高ーーーー。“尻芸”は見ているこちらがちょっと恥ずかしくなってしまうが、ついついにやついてしまったのでありました。もっとあの役で出て欲しかったな〜〜。そして2役目は対照的な男っぽさの漂う、ビクトル中尉。主役のアレナスをキューバなまりの英語で脅すところは、先の女装とは別人のよう。しかし、クイーンのフレディ・マーキュリーばりの口ひげの風ぼうは、こちらもどこかゲイっぽいのだった。
おっと、のっけから脱線(って、ほんとはデップを見たくて行ったのだが)。これはデップが主演ではなく、キューバの作家、アレナスの半生を描いた映画なのだったっけ。笑えたり、ゲイのラブシーンにおもわず気恥ずかしくなるシーンはあるものの、本質的には真面目な映画なのですよな、これ。不勉強ながらわたくし、この作家、レイナルド・アレナスをこの映画で初めて知った。カストロ政権下で、言論弾圧、ゲイへの差別の2重の圧力を受け、もがいた男の半生。そのアレナスを演ずるハビエル・バルデム、あらゆる意味で真実味のある演技で、というか、こうして思い返してみると、そのものになりきっていた感じだった。ゲイの恋人に、才能豊かな作家に、怯える逃亡者に、獄中の囚人に、亡命者に。
ストーリーや構成、内容含め全体的な満足度は、個人的には5つ★でいうと「★★」ぐらいだけど、「彼の本を読んでみたいな」と思わせるものではあった。ナレーションで語られる彼の詩的な作品を聞き、またパンフレットの解説などを読むと、よりその思いは増した。投獄中に受刑者たちの手紙を代筆し紙とペンを手に入れたアレナスは、獄中でも小説を執筆し、それをなんとかして外部に持ちだすのだった。彼にとって“書くこと”は自由を求めることと同意義。彼の著作は、1冊以外はすべて国外で出版され、高い評価を受け賞も受けたという。祖国だけでなく、世界に、すべての人間に訴えかけられるだけのものが彼の作品にはあるのだな。才能とその強い情熱に羨ましさを感じた。彼と違って、何でも言えて、書けて、そんな自由な国にいるのに。ありあまる自由があるのに語るべきものを持たない凡人と、語るべき自由がなくあふれる才能と言葉を持った才人、その距離は果てしなく遠い。
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※もうひとつ、「ブロウ」のあとに観た「猿の惑星」ですが、、、、。途中で飽きて、居眠りしてしまいました。オリジナルとは別物とあらかじめ心構えはしていたけど、ティム・バートンが監督だから面白く料理してくれるものと思っていたのに、期待はずれだったな〜。寝てしまって全部観てないのでなんですが。オープニングはなかなかにかっこよい感じだったのにね。猿のトレーナーの女性乗組員が作家の荻野アンナに似てるな〜とか思いつつ観てた前半、猿の世界に行ってからの、だる〜いマンガみたいなドタバタ展開にあきれ気味。知能の高いしゃべる猿が、やたら動物的なのもなんだか違和感を感じてしまうし。そして眠気が……。ラストもなんだかなあ、って感じだったな。エンターテインメント作品として観ても、ちょっと中途半端だった感じ。って、たぶん半分ぐらいしか観てませんけど。淀川長治さんがスターウォーズを観てるとき、デジタル場面では眠ってて、人が登場する場面になると急に目を覚ます、って話をある映画評論家のコラムで以前読んだけど、なんか私も最近その傾向があるようだ、、、。映画館がびっくりするほど小さくて(まるで小学校の教室)、だまされたって感じがしたのも観る気が無くなった要因かな。もう行かないぞ、新宿文化シネマには。
(9/27Up dated)
■その正義と悪は、誰のもの?(9/24)
水曜と日曜は久々に映画を観る機会、とばかりに観に行ってきた。「ブロウ」「猿の惑星」「夜になる前に」の3本。贔屓のジョニー・デップさまがそのうち2本に出演しているので、なかなかに楽しかったです。これらについては後日また。
先週は、アメリカのその後を伝えるニュースや新聞・雑誌などの報道から次々と入ってくる情報に、腹立たしさやいらだたしさ、不安や悲しさを感じていた一週間。追突機内やビルにいた人々のその後の実態がだんだん明らかになってきた。ビルの瓦礫の中からは人の体の一部が見つかる。そして、容疑者と報じられていた人々が祖国で生きているという報も。そりゃそうだよな、すぐ素性が知れる本物のパスポートで搭乗することなんて常識的にそうそうしないだろう。ニューヨークで若者たちが反戦を訴える集会を開く一方で、イスラム教徒と思い込まれて射殺されたヒンズー教徒のインド人がいたという報も。うちのあたりでも昼間、基地の飛行機が飛び交うことが前より多くなった。相模原などではもっとひどく、会話が困難で頭痛もするほどだという。
土曜の昼は、世界同時中継だというチャリティーコンサートをテレビでやっていた。スティング、ボン・ジョビ、シェリル・クロウなど名だたる歌手たちが歌う。ホストとして、ハリウッドのスターたちが多数出演していた。なかでも、ルーシー・リューのコメントが印象的だった。「悲しむべきことですが、どうか宗教や見かけの違いに惑わされず、みなさんが行動してくれるよう願っています」。正確ではないが、そんな内容。ルーシーが言いたかったのはたぶん、イスラム教徒に対する差別や反感などが強まっていることに対してだろう。しかし、新聞が伝えることによると、ジョン・レノンの「イマジン」が、自粛すべき曲のリストにあがっているとか。「国境のない世界」、それは無理なのだろうか、人間にとっては。
ブッシュ大統領が世界に呼びかける。「アメリカと共に戦うか、テロリストたちと運命を共にするか」。これじゃ脅しだ。テロリストと同次元じゃないか。このあいだまで外交関係を重視していなかった、あるいは敵対していたような国にも協力を求めている。
日本政府は10億円の見舞い金を出したという。10億円。それが本当に救援に使われればいいが、ラディンの首にかかっているという賞金にあてられはしないといえるのだろうか。日本だって福祉面で困っている人はいるのだから、福祉政策にそれだけのお金を充てられればと思うのだが。世界がアメリカの動向に注視している。アメリカは報復するだろう。でも、その後どこへ向かおうとしているのか。ブッシュ大統領が言う。「我々は悪を許さない。正義は勝つ」。反米感情の強いイスラム教徒も同じことを言う。「アメリカは悪だ」。正義や悪という概念は、立場や見方が違えば逆転するものだ。その正義や悪は、自分たちの概念だ。
この間ビデオで観た、「猿の惑星/征服」には、こうした現状をまさしくあてはめられるシーンやセリフが多々あった。映画の内容的には、他の猿の惑星シリーズの中では面白みには欠けると個人的には感じるが、こういう時期に観たのでなかなか興味深かった。猿を奴隷化した人間達は、反逆者たちを押さえつける。その中心にいる知事は、確たる証拠がなくても危険分子だということで対象を根絶やしにしようと命令する。反逆したシーザーの唱える正義と、知事に代表される人間にとっての正義。それらはどちらも相手を倒すこと。虐待された歴史と祖先を持つ、知事の側近の黒人、マクドナルドが最後に両者の仲立ちをする。
今必要なのは、彼のような立場の存在だと思う。それができる人や国があれば、その存在こそがヒーローになれるのでは。
(9/24Up dated)
■2001年9月11日という日(9/17)長らくお休みしていた私のこのページだが、9月というとあの事件のことは避けて通れない話題だ。帰宅してテレビをつけたとき、1機目の航空機がビルに激突した映像が映って「えっ?これニュース?」と驚いた。事故かと思っていたら、「ブッシュ大統領は、これはアメリカに対する明らかなテロだ、と言っています」とニュースでは伝えていた。まさか、と思っていたら、2機目、3機目が……。最近、信じられないようなニュースが多かったが、ここまできたか、という感。翌日から数日間、新聞のすみずみまで読み、駅売りのスポーツ新聞やデイリー読売まで買い、ニュース漬けになった。戦争が始まるかもしれない、と思うと、なにやら得体のしれない不安を感じる。
湾岸戦争のときもそうだったが、あのときはうちの母が当日に亡くなっていて、正直なところ数日間はニュースどころではなかった。たまにテレビをつけると花火のような戦闘の映像ばかりで、「ああ、あの映像の向こうでも、人が死んでいっているのだな」とぼう然と見ていた記憶がある。それももう10年も前のこと。でも、病気で死んだ人間の場合と違って、戦争や内戦で親族を失った家族というのは、対象の国や政権を憎むのだろう。あの戦争のツケが、いや、たぶんもっと昔から巡り巡って回ってきた気がする、今回の事件には。
知り合いがアメリカに何人かいるし、カナダにも知り合いや友達がいる。彼女達の無事は伝わってきたけれど、今回の事件のことで、何か言い知れない不安のようなものがいまだに心に広がり、すっきりしない。アメリカに住んでいる人などは余計そうかもしれない。このような事態は、今回限りではないのではないか、ということだ。世界のどこで同じようなことが起こってもおかしくなかったのではないか。そして、その場に知り合いや自分がいるかもしれない可能性は少なからずあるのだということ。
もし、報道されているようにこれが一部の組織の犯行だとしても、その周辺国にまでアメリカが報復攻撃を加えれば、また似たようなことはきっと続いていくだろう。憎しみは憎しみを呼び、それはつながり続けていく。今回の事件もおそらく、その延長上からきたことだろう。犠牲になった方たちは本当に気の毒だし、罪のない人たちが巻き込まれたのは悲しむべきことだけれど、この事件が起こった原因の一端はアメリカという国の政治体制にもあったのではないかと思う。
アメリカ人がみんな報復を望んでいるのではない(であろう)ように、アラブ諸国の人々がみんなテロリストだったりするわけではない。わずかながら私が旅をした中東の国でも、町の人々は親切だった。国や民族をひとくくりで見ないで、個人個人を見て欲しい。一歩引いてこの出来事を見聞きしている者だからいえることなのかもしれないし、当のアメリカの人たちはそんなに冷静ではいられないのかもしれない。でも、、、、。
話は飛ぶが、先月、仕事の合間にときどき借りて見ていたビデオ、『猿の惑星』シリーズのこと。ティム・バートンの猿の惑星はまだ観ていないが、元祖のシリーズは、戦いを求めてやまない人間の悲しい性が、人類の運命に悲しい影を落としていて、現代にも通じる社会批判が込められている。このまま人間が戦い続けていけば、いつか人間は滅んで、あの映画のようなことだって遠い未来には現実になってしまうのかもしれない、などとまでここのところ思ってしまった。
そんなこんな昨今ですが、日常は淡々と続いていくわけで。最近仕事で行った先には猫がごろごろしていて、猫好きとしては心が和んだ。猫はいいな、寝てばかりで……。
(9/17up dated)※そういえば、先月のことなのですっかり遠い話になり忘れてましたが、スカイパーフェクTVのフォーカスLaLaという番組で、当ホームページがちらっと紹介されたのでした。それを見ておいで下さった方もいらっしゃるみたいでしたのに、長らく更新せず失礼しました……。