『サーチエンジン・システムクラッシュ・ツアー』
SST
02,03/21
8

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■私にとっての「02,3.21 SST」

 私にとって見慣れた池袋という街を、これまでとは異なる目線で見直し、歩くきっかけを与えてくれたこのツアー。『サーチエンジン・システムクラッシュ・ツアー』、略して『SST』を終えて、その日の私の気持ちを一言で表すと、「楽しかった」という、実に単純で幼稚な言葉に落ち着いてしまう。これでは初めての遠足から帰ってきたときの子どもの感想ではないか。だが、まさにその日そのときの私の心中はそれなのである。いや、遠足よりはオリエンテーリングのほうがもっと近いかもしれない。意味のない数字や記号を見つけながら、グループで歩く。そのとき参加している私たちにとってのみ、途上で見出される数字や記号が意味を持ってくる。そう、私にとってあれは幼い頃のオリエンテーリングのような体験だった。決められた道順ではあるが、自分たちの足で歩くこと。歩きながら探し、見つけること。ゴールすることでなく、その途上に意味があること。

 もう少し大人的立場でいうならば、文学散歩のようなたぐいのものであったかもしれない。小説の舞台が実際にあるとすると、そのファンというものの多くは、実際の場所を訪れてみたくなる。私も何度かそうしたことを1人で試みたが、その行為をあまり「楽しい」と感じたことはなかった。今回は、文学散歩とは趣も目的も異なるが、似たような経験でありながら、とても楽しかった。なぜだろう。それはたぶん、一緒に歩く「他者たち(複数)」がいたことと、「歩く」という行為が組み合わさった結果ではないだろうか、と思う。

 昔から池袋という街のあちこちを歩いていたし、知っているつもりだったが、まだまだ知らない、見ていない、見落としていたことがたくさんあったことに気付いたのも新鮮だった。私は池袋という街にすでに馴染みがあったから一歩引いた目線で見ていたつもりだったが、それでも新鮮だったのだから、初めてこの街を歩いた人は、わくわくし通しだったのではないだろうか。この日の私は、観光者の視点で池袋を見ていた。このツアーは、どんな街にいても異邦人になれる心得を会得させてくれたように感じる。観光気分で異邦人になると、いろいろなものが見えてくる。

 さらに、「読む」ことと、「小説の中を足で歩く」こととの違いも感じた。前者は1人きりの脳内彷徨。後者には、「からだ」が伴う。それらを掛け合わせ、さらに他者の存在を意識しながら歩くことは、めったに体験できることではない。脳内彷徨しながら現実の光景、他者との会話などに対応しながら全身の感覚をオープンにする。「読む」ことが閉じていく感覚の中での行為だとすれば、「小説の中を歩く」ことは開いていく感覚の中での行為なのだろう。だからこそおもしろく、楽しく感じられたのではないか。

 「あるはずのものがなく、ないはずのものがある」「リンクをたどるとひどい目に遭う。いや、ひどい目に遭いたいのだ、誰もが」。そう宮沢さんは書いた。確かに私たちは誰もが、ひどい目に遭いたかったのだと思う。そしてひどい目に遭う自分たちを楽しみたかったのだと思う。なんだかマゾ的だけれど。あるはずのものを探し、ないはずのものを見つけ、驚き、ときには少々がっかりしながら、延々と歩いた。意味がないことも、考えようで意味を持つ、そのおもしろさを味わいながら。明確な答えはほとんど見つけられなかったと言ってもいい。でも、その日池袋を歩いた私たちは、それぞれが小説を自分なりに解釈し、再構築しながら、自分の物語にした。

 小説を別な角度から楽しむためには。そんなことをふと考えると、こんな言葉が浮かんだ。「書を携え、街に出よ」。読み、そして歩く行為は不思議な効果を生み出す。

(SSTから1ヵ月後に、参加者の1人として記す。4/20/2002Up dated)

※あの日に感じた気持ちを言葉にしたくて、なかなか考えがまとまらなくて、しばらく仕事も忙しかったし……と、気付くと1カ月も経ってしまっていました。その間に、すでにあの日のことを書いた多くの人たちのサイトも読ませていただきました。一カ月後になってしまって、もうあんまり書くことに意味はないかなと思いつつ、私なりの気持ちを表してみたくて、書いてみました。最後に。1人で同じ事をしたとしても、今回感じたような気持ちは味わえなかったと思います。楽しく、不思議な体験でした。一緒に歩いてくださった4班のみなさん、ありがとうございました。

 また、もっとたくさんの人と話したり、一緒に歩いてみたかった気もしますが、それでは宮沢さんが懸念していたようにデモ状態になってしまったかもしれず。今回同じ班にならなかった方々も、機会があればまた小説の中でお会いしましょう。ちなみに私は、ベージュの帽子をかぶっていた者です。

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